今さら聞けない!技能実習制度の基礎知識。岩手から行う国際貢献。
- 行政書士 井上 知紀
- 3月15日
- 読了時間: 7分
更新日:3月30日
近年、日本の労働人口は減少の一途をたどっており、岩手県で事業を行う皆様もその実感があると思います。以前は特に介護業界における人手不足が話題の中心でしたが、昨今では業種問わずどのような業種においても人手不足が社会的な問題となっています。
そのような状況下で外国人材の受け入れは、今後の経営を左右する重要な選択肢の一つとなっています。
外国人材の受け入れ方法としては、技能実習制度と特定技能制度の二つが主なものとして挙げられます。それぞれの制度には特徴があり、目的や自社の業種に応じて適切な制度を選択する必要があります。
今回は、技能実習制度に焦点を当て、その制度概要、目的、受け入れ可能な職種、受け入れの流れ、注意点などを詳しく解説していきます。
【目次】
1.技能実習制度とは
5.受け入れの流れ
6.注意点
8.まとめ
1.技能実習制度とは
技能実習制度とは、開発途上国等の外国人を日本で受け入れ、日本の優れた技能・技術・知識を習得し母国に持ち帰ってもらい、母国の経済発展に役立てることを目的とした制度です。
上記の通り技能実習制度は「国際貢献」が目的ですが、人手不足に悩む中小企業にとって貴重な労働力となっているのも事実です。
技能実習生は、日本の企業や団体(実習実施機関)で実践的な技能・技術・知識を習得します。技能実習期間は原則として最長5年間です。
2.受け入れ可能な職種
技能実習生はどのような業種でも受け入れ可能なわけではなく、91職種168作業に限定されています(2025年3月時点)。
例えば建設業の場合、建設業許可は29種類あります。ですが建設関係で技能実習生ができる作業は22職種33作業です。
建設業許可の種類とこの「職種」はイコールではありません。建設業に限った話ではなく、ご自身の業種が対象になるか、受け入れを検討中の職種が認められているか確認する必要があります。
こちら記事は技能実習制度に関する記事のため詳しく記載はしませんが、業種限定があるのは特定技能制度も同様です。

3.技能実習制度の仕組み
技能実習生は、入国後にまず日本語、日本の文化、技能などについて講習を受け、その後企業などで実践的な技能を習得します。
受け入れルートは下記2パターンとなります。
企業単独型:日本の企業が単独で技能実習生を受け入れる
団体監理型:監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で実習を行う
受け入れノウハウがないと企業単独型は難しく、多くの企業は団体監理型で技能実習生を受け入れています。
4.技能実習制度の区分
技能実習制度は、技能等の習熟度に応じて、第1号技能実習、第2号技能実習、第3号技能実習の3つに区分されます。
第1号技能実習:入国後1年目の技能実習
第2号技能実習:2年目以降の技能実習(試験に合格する必要あり)
第3号技能実習:3年目以降の技能実習(優良な実習実施者・監理団体のみ)
技能実習生は、第1号技能実習を修了後、試験に合格することで第2号技能実習へ移行できます。さらに、優良な実習実施者・監理団体に所属している場合は、第3号技能実習への移行も可能です。
この3つのステップが設けられている理由は、第1号が技能の「修得」を、第2号が「習熟」を、第3号は「熟達」を目的としているからです。
5.受け入れの流れ
技能実習生の受け入れは、以下の流れで進みます。
技能実習計画の作成
監理団体(※1)への申し込み
外国人技能実習機構(※2)への申請
在留資格認定証明書の交付申請
在留資格認定証明書の交付
技能実習生の入国
技能実習の開始
技能実習計画の作成では、技能実習生に習得させたい技能・技術・知識の内容や、実習期間中の具体的な作業内容などを記載します。
業種によって行わせなければいけない業務内容が定められておりますので、こちらもご自身の業種で調べる必要があります。
業務内容が定められている理由は、制度設計に戻りますが、技能実習制度は人手不足対策ではなく「技能移転による国際貢献」が目的だからです。
※1 監理団体とは、技能実習生の受け入れをサポートする機関です。監理団体は、技能実習計画の作成支援、技能実習生の入国・在留手続き、技能実習中の生活指導などを行います。
※2 外国人技能実習機構は、技能実習制度の適正な実施を監督する機関です。外国人技能実習機構は、技能実習計画の認定、実習実施機関や監理団体の監査などを行います。
6.注意点
技能実習制度を利用するにあたっては、以下の点に注意する必要があります。
技能実習生の労働条件を日本人と同等以上に設定すること
会社ごとに技能実習生の受け入れ人数に制限があること
技能実習生の在留期間には上限があること
技能実習制度の目的は、技能移転による国際貢献であり、労働力不足の解消ではないこと
毎月一定の費用が発生すること
技能実習生は原則転職ができず、雇用主に対しては弱い立場にあると言えます。そのため適切な運用がなされなければ技能実習生の権利侵害や失踪などの問題につながる可能性があります。
実際、雇用主より性暴力を受けたとして女性技能実習生が提訴したり、民家への侵入窃盗により逮捕されたりした事例もあります。
技能実習制度の趣旨を理解し、適正な運用を心がけることが重要です。
7.特定技能制度との違い
技能実習制度と似た制度として、特定技能制度があります。特定技能制度は深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度です。
技能実習制度と特定技能制度の主な違いは、以下のとおりです。
制度 | 目的 | 在留資格 | 在留期間 |
技能実習制度 | 技能移転による国際貢献 | 技能実習 | 最長5年 |
特定技能制度 | 人手不足の解消 | 特定技能 | 最長5年(更新あり) |
技能実習生と異なり会社ごとの受け入れ人数上限はありません。 分野ごとの受け入れ目標が定められており、今後の日本の人手不足解消の鍵ではありますが、順調に増えているわけではありません。
どちらの制度を選択するかは、受け入れの目的に応じて検討する必要があります。
8.まとめ
技能実習制度は外国人材の受け入れを通じて、岩手県内の企業の皆様が国際貢献に携わることができる制度です。
制度の趣旨を理解し、適正な運用を行うことで、外国人材と企業様の双方にとって有益な結果をもたらすことができます。
またご存知の方も多いかと思いますが、「原則転職できない」という制度に対しメスが入り、2024年6月に改正法案が成立しました。
2027年までに技能実習制度は廃止され、今後は「育成就労制度」へと変貌を遂げます。まだ未確定の部分がございますので詳細が判明次第記事を作成いたします。
外国人材の受け入れについてお悩みの際は、専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所代表の井上は、行政書士に加え外国人材紹介会社かつ登録支援機関の会社経営にも携わっています。
岩手県の企業様に最適な外国人材のご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談くださいませ。
今回のコラムが、岩手県の企業の皆様にとって、技能実習制度への理解を深める一助となれば幸いです。
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