インバウンド効果でコロナ禍前よりも観光客が増えつつある観光地。そのような中、ホテルや旅館では従業員の人材不足に加え外国語に対応できるスタッフの需要も高まっています。
そんな時に心強い味方が外国人材です。
ではいったいホテル等ではどのような在留資格でどのような業務を任せることができるのでしょうか。
こちらの記事では在留資格に詳しい岩手県盛岡市の行政書士が、ホテルで働くことのできる在留資格について解説します。

この記事は
・海外からの宿泊客の満足度を向上させたい
・人手不足を解消したい
と考えている宿泊業の経営者、管理者、人事担当者向けに作成しています。
なお、永住や日本人の配偶者ビザなど、就労制限のない資格については割愛しています。
1.資格外活動
まず、適切な在留資格に基づき日本に在留しかつ資格外活動許可を得た方を雇用することができます。
留学や家族滞在等の在留資格の場合、定職に就いたりアルバイトをしたりすることは原則できません。
ただし申請をして許可が降りれば、週28時間以内に限り仕事をすることが認められます。
そこで英語等を話せる留学生をフロント業務で採用したり、もしくは社会人の方を清掃業務等で採用したりすることができます。
就労ビザ(特定技能と技能実習を除く)で在留している方を単純労働に従事させることはできませんが、資格外活動の場合は可能です。
宿泊業での接客を学ぶ専門学生等をアルバイトとして雇用すれば、入社前にその留学生の資質を見ることができ、卒業後に正社員として雇用することもできます。
ただし卒業後は単純労働ができませんので注意が必要です。
アルバイトの延長線上で従前と同じ業務を行ってしまい不法就労に当たらないよう、正社員に切り替わる段階で業務の見直しを行いましょう。
2.技術・人文知識・国際業務(国際業務編)
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は技人国として省略されるため、以降は技人国ビザと記載します。
元々は「技術」と「人文知識・国際業務」という2つの在留資格だったのですが、平成26年の入管法改正により統合されました。
国際業務としてまず思い浮かぶのは通訳や翻訳ですが、その他にも広報や宣伝、海外取引業務なども該当します。
「日本の公私の機関との契約に基づいて行う外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」であれば良いわけです。
ホテルや旅館であれば、フロント業務、予約の受付管理、海外客向けの広報、海外客集客の企画などになります。
ただし外国語を使用するからと言ってどのようなケースでも認められるわけではありません。
まず1点目として、外国人材を雇用するだけの業務量が求められます。
例としてホテルのフロント業務で考えます。

観光地の比較的大きなホテルや旅館等であれば部屋数が多く、外国からの観光客も多いでしょう。
ホテルに入ってまず向かうのがフロントです。
高級なホテルや格式高いホテルではフロント業務がそのホテルの印象を決める、と言っても過言ではありません。
また予約段階でも英語対応が求められる場面もあるでしょう。
このような場合、十分な業務量があると判断される可能性があります。
一方、低価格が売りのホテルではメイン顧客が日本人のビジネスマンであったり、受付が機械により無人化されていたりするホテルもあります。
このような場合は外国語での接客どころかそもそも接客がほとんど発生せず、十分な業務量がないと判断される可能性があります。
高級なホテルにしろ低価格なホテルにしろ、外国人材を雇用するときには
・ホテルの規模
・宿泊客の属性
・フロント業務の重要性
・海外客新規開拓の重要性
・雇用する外国人材が能力を有していること
等を分析し雇用の必要性を示していくことが求められます。
国際業務で通訳に従事する場合、大学卒の場合は実務経験を求められませんが、専門学校卒の場合は3年以上の実務経験を求められます。
社会人を経て日本の専門学校に入学した方なら実務経験のある方もいるかと思いますが、社会人を経ていないと実務経験のある方は少ないでしょう。
ではその場合、日本のホテルや旅館に就職することはできないのでしょうか。
3.技術・人文知識・国際業務(人文知識編)
人文知識分野に関する業務は幅広く、経理、コンサルタント、総合職等が該当します。
「日本の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務」が在留資格該当性ありとされます。
通訳など国際業務の実務経験がなくても、人文知識について在留資格該当性があれば許可されることがあります。
これは通訳等の業務は人文知識に関する業務(人文科学分野に属する技術や知識を必要とする業務)にもあたると解釈できるからです。
ただし学んできたことと従事する業務の関連性が求められるため、制限なく許可されるわけではありません。
ここで許可事例と不許可事例を採り上げます。
◼︎許可事例
観光・レジャーサービス学科で観光地理や旅行業務等を履修した者を、フロント・レストラン・客室業務等についてもシフトにより担当すると申請があった。業務内容の詳細を求めたところ、レストランにおける接客、客室備品オーダー対応等一部「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない業務が含まれていたが、申請人は総合職として雇用されており、主としてフロントでの翻訳・通訳・予約管理業務等を行うものであり、また他の総合職採用の日本人従業員と同様の業務であることが判明したもの。
◼︎不許可事例
国際ビジネス学科において、経営戦略、貿易実務等を履修した者が、同国人アルバイトが多数勤務する運送会社において、同国人アルバイト指導のための翻訳・通訳業務及び労務管理を行うとして申請があったが、教育及び翻訳・通訳業務と専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの
このほかにも許可・不許可事例はあります。
全く同じケースはないためこれは良くてあれはダメとは言えないため、興味のある方は他の事例についても参考にしてみてください。
当然ながら単純労働に従事させることはできません。

4.特定技能1号
在留資格「特定技能」は2019に創設された制度で、日本の人手不足に対処することを目的としています。
どんな分野においても受け入れ可能なわけではなく、2025年現在16分野にのみ認められています。
宿泊業もその中の1つです。
2019年時点では0人だった特定技能1号での在留者ですが、2024年末では25万人を超えるほど急速に増えている在留資格です。
特徴としては通訳やフロント業務等のみならず、清掃やレストランでの配膳業務等、単純労働にも従事させることができます。
ですが入国時に求められる日本語能力が高くなく、あまり日本語が得意でない方もいます。
また技人国ビザには総在留期間の上限がない一方、特定技能1号は最長で通算5年という決まりがあります。
特定技能1号を終えて2号に移行することで総在留期間の制限はなくなりますが、移行に際して受ける試験が非常に難しいためハードルは高いと言えます。
2024年12月に東北で初めて、岩手県ホテルに勤務する特定技能1号の方が特定技能2号に合格されました。
5.おわりに
日本は4月が年度初めであり、それに合わせて外国人雇用を検討される企業様も多いと思います。
特に1月〜3月の間は宿泊業に限らず、留学生が学校を卒業し技人国等への在留資格変更で入管が非常に混み合います。
中には在留資格の変更が4月の入社に間に合わないケースもあるでしょう。
その時、在留資格の変更が終わっていないにも関わらず勤務開始させてはいけません。
これは不法就労になってしまいます。
仮に雇用契約書で雇用期間を4月1日〜としていても、実際に勤務させるのは在留資格変更が終わってからです。
大きな会社では合同研修等もあるでしょうから正確に書類を作成し、なるべく早く申請するようにしましょう。
当事務所代表の井上は外国人材紹介会社の取締役も務めています。
在留資格の取得・変更申請だけでなく、人手不足に対するお悩み相談も受け付けています。
英語・ネパール語にも対応可能ですのでぜひお気軽にご相談ください。
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