「うちの会社っていくらまで借りられますか?」。中小企業支援をしていると、たまにこのような質問をいただきます。う〜ん、いくらまで借りられるのでしょうか。こちらの記事では元地方銀行融資担当の行政書士が、その答えを解説します。

1.いくらまで借りられるか
まず結論として、私は銀行ではない(お金を貸す立場にない)ため分かりません。
仮に銀行に対し同様の質問をしても明確に答えてくれる事はありません。
なぜなら銀行は資金使途の決まっていない融資を嫌うからです。
想像してみてください。
あなたが知人から「お金を貸して欲しいんだけどいくらまでなら大丈夫?」と聞かれたら、「何に使うんだろう?」とまず思いますよね。
そして「返ってくるのだろうか、怖いな」と感じると思います。
資金使途が決まっていない時には特に、です。
また資金使途が決まっていたとしてもその使い道がパチンコや競馬等の場合にも同様です。
では逆に「洗濯機が壊れてしまって、買い替えのためにどうしても10万円必要だから貸してもらえないだろうか?」と言われたら、資金使途が不明のときより不安は少ないと思います。
10万円は無理でも3万円なら大丈夫、という事もあるでしょう。
(※私は「金の切れ目は縁の切れ目」という言葉をモットーとしているため、絶対にお金は貸しませんが)
壊れた洗濯機や購入予定の洗濯機のカタログを見せてもらって信ぴょう性を確かめたり、購入後に現物を見せてもらって嘘をついていなかったか確認したりする事もできます。
自動車税等の支払いのためであれば納付書を見せてもらうこともできます。
このように、少し想像すれば「どのくらい借りられるか?」という質問が的を得ていない事はすぐに分かります。
的を得ていない質問をすると
・何か急にお金が必要になる悪いことがあったのだろうか
・この会社の経営は大丈夫だろうか
・経営者として心配だな
などと、疑わしい目で見られることもあります。
銀行に対して「いくらまで借りられますか?」と質問することは絶対にやめましょう。

2.借入可能金額の目安
冒頭で「いくらまで借りられるか分からない」と言いましたが、とは言え目安は欲しいですよね。
借りられる可能性が低いのに銀行に対し無理な相談をすると、「よっぽど経営が厳しいのだろう」「自分の会社のことを分かっていないのではないか」という見られ方をされてしまいます。
自社の立ち位置を理解するために、こちらでは2つの指標についてご紹介します。
1)債務償還年数≦10年
少し難しい言葉が出てきましたが、簡単に言えば今ある借入金を10年以内に返せる事を意味します。
借入金の返済財源は会社の営業CFです。
こちらでは簡易的に税引後利益+減価償却費とします。
そうすると、
債務償還年数=借入金÷(税引後利益+減価償却費)
という数式が成り立ち、これが10年以下であれば良いわけです。
※減価償却費は販管費として計上するものの、実際にはお金が出ていかないためCFに加えます。
具体的な数字を当てはめてみると
債務償還年数=借入金1,000万÷(税引後利益150万+減価償却費50万)=5年
といった具合です。
CFが変わらないとした場合、借入金が2,000万円のときに債務償還年数は10年となります。
この10年という数字は、銀行格付が正常先として分類されるかどうかの指標になっています。
債務償還年数が10年以下の場合、正常先として分類されます。
銀行格付については別記事をご参照ください。
銀行格付け・債務書区分についてはこちら>>>
そのためこの場合には、銀行側が前向きに融資を検討してくれる事が期待できます。
2)借入金月商倍率
この指標は今ある借入金が月商の何倍かを表します。
月商は月毎に変動が大きい会社・業種がありますので、月毎ではなく年間売上を12ヶ月で割った数字で見ます。
借入金月商倍率の目安は6倍以下です。
具体的に数字を当てはめてみると、
借入金月商倍率=借入金1,000万÷(年間売上高4,800万÷12ヶ月)=2.5倍
といった具合です。
期末時点ではなく期中の状況を確認する場合、前年の年間売上高ではなく当月までの総売上で見ても良いでしょう。
もちろん、①の場合でも②の場合でも目安を下回っているからと言って、無条件で貸してくれるわけではありません。
資金使途や返済のシミュレーション等、融資の必要性や安全性を示す必要があります。
上記2通りの計算方法は簡単ですので、いくらになると目安を上回ってしまうのかぜひ一度計算してみてください。
3.まとめ
本記事では自社が受けられる融資額の目安について解説をしました。
お金を借りたことがない社長(や個人事業主の方)の中には
・お金を借りると利息がもったいない
・借入金があると心がモヤモヤする
・無借金経営にこだわりたい
といった理由で融資を敬遠する方もいらっしゃいます。
会社の業績が数年に渡って良く、かつ資金が潤沢にあればそれも良いと思います。
ただいざお金が足りなくなったときに会社の業績が良くないと、融資を受けられないこともあります。
会社は赤字だから倒産するのではなくキャッシュが回らなくなったときに倒産するのです。
銀行に言われるまで資金繰り表を作成していない会社も多いですが、計画的な資金・融資計画のためにも作成されることをオススメします。
当事務所では元地方銀行融資担当という強みを活かし、お客様の資金繰り管理を行なっています。
許認可等に関連せずお金周りの相談だけでも可能ですので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。
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